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ブリーフィング

米国M&Aアップデート#2

東京オフィスの米国M&Aパートナーが中心となり、日本企業の米国におけるM&Aにおいて注目すべきトピックスをお届けします。

M&A 

米国企業の大半(また、Fortune500企業の65%以上)はデラウェア州で設立されています。これらの企業の事業はデラウェア州の裁判所の管轄下にあります。そのため、デラウェア州の裁判所は高い専門性と豊富な経験を有しており、また、信頼性の高い裁判所として、その意見は米国の他の州でも大きな影響力を有します。最近デラウェア州でなされた以下の2つの判決は、日本からの米国への投資に影響する可能性がありますので留意が必要です。

  • 経営難に陥った企業の売却 ~普通株主に対する不十分な補償~
    優先株主と普通株主で構成される企業を経営難の状況において売却する際、現金配当の優先順位を理由として普通株主がほとんどあるいは全く補償を受けられない結果、当該普通株主から訴訟を提起されるリスクがあります。経営難に陥った企業の売主は、株主がより利益を得ることのできる(あるいは得ることのできた)代替案があるかどうかなど、提案された取引の公正性を案件の状況に応じて検討する必要があります。最近の判例では、デラウェア州衡平法裁判所の裁判官が、事業を廃止する以外に代替案がないとする会社の合併案の公正性について論じています。 判決文につきましてはこちらをご覧ください。
  • アーンアウト(Earn-out)における2つの側面
    米国事業を買収及び売却する企業は、「アーンアウト」対価の未払いに関する最近のデラウェア州衡平裁判所の判決に留意する必要があります。当該事件では、対象事業が一定のマイルストーンを達成した場合に、買主が追加的な対価を支払う義務を売買契約に明確に規定していました。しかし、買主が対象事業の目標を達成するために支援・促進するという義務は、法的拘束力のない意向に過ぎないものとしてなされており、最終契約には十分に規定されていませんでした。最終的には、対象事業は、マイルストーンの達成が非常に困難になるように運営・再編され、売主は、詐欺、契約違反、黙示の誠実・公正取引義務違反を主張しました。本判決では、アーンアウトの文脈で、どのような買主の誓約が相手方として依拠できるものとするべきか、あるいは、「単なる誇張」(mere puffery)として法的拘束力を持たないものと捉えられるべきかを含め、各主張について解説しています。

独占禁止法 

インバウンド・アウトバウンドの投資を問わず、米国の規制当局による審査を鋭く意識した独禁法戦略が必要です。      

  • 競業避止条項-続く戦い
    2024年4月、米国連邦取引委員会(FTC)は、「上級管理職」以外の従業員に対する新たな競業避止義務契約を禁止する規則を発表しました。2024年7月、本規則は米国連邦裁判所で争われ、規則の適用を差し止める仮処分が認められました。本判決は、本訴訟の原告のみに適用されますが、申し立てには商工会議所を含む複数の訴訟参加者が正式に加わっており、おそらくFTCには本規則を制定する権限が無いという結論に基づいています。現状の不透明さを受け、米国の従業員を抱える企業は、従業員との競業避止義務契約の法的強制力及び合理性に引き続き注視する必要があります。 詳しくは、弊事務所のブログをご覧ください。
  • ガン・ジャンピング-司法省、HSR法違反でLegends Hospitalityに350万米ドルの罰金
    2024年8月、米国司法省(DOJ)とLegends Hospitality(Legends)は、企業結合前の違法な事前調整への関与について、Legends社が350万米ドルの罰金を支払い、独禁法・コンプライアンス遵守のモニタリング・研修を実施することで和解しました。Legendsは、HSR(企業結合)届出以前、あるイベント会場の施設管理サービス業務の入札を巡り、当該施設の当時の管理会社である買収対象会社と競合関係にありました。しかし、HSR届出後の待機期間中、両当事会社は当該会場の施設管理サービス業務を落札者であるLegendsに移行せずに、引き続き買収対象会社が管理運営を継続することで合意していました。また、DOJによると、HSR届出前にも、両当事会社は、他入札案件に関する共同入札を行う上で、競争上の機密情報を共有していました。
    ポイント:多くの規制当局と同様に、米国の規制当局にとってガン・ジャンピング行為は依然として執行順位が高い違反行為です。統合計画に多大な時間とリソースを投入する当事会社は、統合計画はいまだ実行ではなく「計画」にすぎないため、当該計画を早期実行しないよう留意する必要があります。また、米国連邦取引委員会(FTC)は、届出の免除について厳格に解釈しており、「投資のみの場合の免除」の適用を受ける取引において、企業の意思決定に影響を与える当事者の意図が反映された行為は、免除の適用範囲を超える可能性があると解釈しています。Legends Hospitalityに関する詳細についてはこちらのブログ、投資のみの場合の免除に関する詳細についてはこちらのブログをご覧ください。
  • 米国の対外直接投資規制-日本企業が知っておくべきこと
    2024年6月21日に米国財務省が発表した「規則制定案(NPRM)」に関して弊事務所ではニュースレターを発行いたしましたが、米国人が特定のテクノロジー分野(特定の半導体、量子コンピューティング、AI関連活動など)で事業展開する中国企業と取引関係にある日本企業に直接・間接的に投資を行う場合、所有や収益の条件によって、本規制の影響を受ける可能性があることに留意してください。
    日本企業が投資規制の対象になった場合: 規制対象となった日本企業への米国人による投資(少数投資を含む)は、禁止又は届出義務の対象となる可能性があります。規則の概要については、こちらをご覧ください。本規制の概要については、CFIUSの元議長であるAimen MirとBrian Reissausが、こちらのポッドキャストで解説しています。